2009年7月31日金曜日

ものつくり敗戦


ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる 」 を読了。
あちこちで紹介されていたので手にとってみたのですが、私にとっては”衝撃”でした。 著者は制御システムなどを研究されてきた工学博士の木村英紀氏。

本書を読んで初めて知ったことのひとつが、日本は第3の科学革命に乗り遅れた、というより、いまだ乗ってさえいないのではないか、という指摘です。ここで書かれている第3の科学革命とは、要するにソフトウェアです。モノではなくソフトウェアを創出するための素地すらない、というのです。

文科系の学生が、SEをはじめとするソフトウェアを開発する職業に就く、またはそれらの企業に入社する奇妙さの回答がここにありました。詳しくは本書をお読みいただきたいのですが、今やシステム周辺企業は3K職として日本では定着してしまっていますが、それもそのはずです。基礎的な数学さえおぼつかない状態で、ソフトウェア開発なんてできるわけがありません。

また私の長年の疑問であった「なぜ日本ではプロジェクトマネジメント力が弱いのか」という点にも回答がありました。
本書によると、システム工学が先に述べた第3の科学革命の中心に当たるようなのですが、米国のアポロ計画を事例にとってプロジェクトマネジメントについての考え方が示されています。
すなわち大きなプロジェクトにおいて、
1.参加者全員が計画の全体を知り、その進行状況を把握することの重要性
2.その際、技術を普遍的な知的能力、もしくは部品とみなし規格化と互換性を進めていく
ことこそがプロジェクトマネジメントの極意のようです。

私自身の経験では、日本におけるプロジェクトマネジメントは1のみが強調され、2が無視されていると思います。1は家を建てるようなもので、土台ができなければ次の工程に進むことができない、という物理的な理由があるため、誰しも理解しやすいものです。したがって、私がプロマネとして優秀だなぁと思った方のなかには、大学で建築設計をやってました、という人がいることに納得するわけです。

しかし2になると、さらに一歩進んで、目に見えないシステムも含めた全体最適解を求めるようなものになります。IT業界では当たり前のことですが、無料で利用者の多いプラットフォームをベースにしたほうがビジネスの拡張性が高く成功の可能性が高い、という常識を指しているのではないかと思いました。
最も経産省・総務省あたりはこの辺に無頓着のようですが・・・。

日本に優秀なプロマネが存在しない最大の理由は、実はこの2にあると思います。建築、特に家を建てる、といった行為において、棟梁と呼ばれる存在(すなわち匠)がその家の出来を左右する、という意識が根強いことを思い起こせば、実際のプロジェクトにおいても同様の選択が行われ、全体最適解が求められていないほうが多い、という現実に立ち返ります。
経験的にも実際のプロジェクトの現場において情実による妥協がいかに多いことか。第3者としてアドバイスする立場なので私も当然ながら最適解を述べるわけですが、まま現場からの突き上げや調整といったことを経て瓦解します。

最近読んだ中ではダントツのオススメですが、ビジネスパーソンはもちろんのこと、高校生・大学生に読んでほしい本です。その理由は、如何に数学が大切なものであるか、について考えさせられるためです。
私はこのブログにおいて度々、数学こそが大切である、と書いてきました。学生の論理的思考の薄っぺらさや、数値の管理能力など、あまりにそのレベルが低いためです。中には四則演算の基礎さえ理解していない者すらいます。
彼らは文部省の被害者です。数十年にわたって数学教育をないがしろにした結果が今の学生です。著者によると日本の数学教育は30年にわたって後退しているのだそうです。

ハタチすぎればタダの人、と本書で評されている日本はGDPは世界第2位であるかもしれませんが、その内実はBRICSにも手が届かない2流国なのだと、当の日本人が意識していないことのほうが私は問題だと思います。そのGDPも、今後は預貯金の取り崩しによって維持されていくのだと改めて認識すべきでしょう。

2009年7月29日水曜日

夏の宮島、錦帯橋


今月はとても忙しく、ブログの更新が遅れがち、かつ頻度が少なくなってしまいました。

忙しさの理由のひとつとして、日本企業がスティービーアワード、国際ビジネス大賞において複数受賞したためです。速報を出したり、授賞式参加の手配を進めたりと、初めてのことなのでいろいろと準備に時間がかかってしまいました。
【速報】第6回(2009年度)国際ビジネス大賞に日本企業が複数受賞!

さらに中旬には香川県高松市で講演があり、国際ビジネス大賞の受賞者発表とほぼ重なるタイミングで出かけたためにこちらの準備もドタバタで、とてもブログの更新をする余裕がありませんでした。

その高松市出張にあわせて、広島市にこの春から転勤した年若い友人を頼りに大人が集合して、遠足に出かけました。広島といえば安芸の宮島(世界遺産)、そして世界遺産候補の山口県岩国市の錦帯橋です。
どちらも川や水場があるので「ビーサン仕様で水遊びしよう!」と言って誘ったのですが、本当にビーサンだったのは私ひとりでした。でもビーサンで大正解でした。

錦帯橋は錦川の上にかかる橋なのですが、夏場はこの川で泳ぐ人も多いのです。暑ければ当然、川に入っちゃおう、ということになります。で撮影したのがこの写真です。
梅雨空だったのに、錦帯橋についたころには晴れ渡り、すっかり夏空です。


この後、いよいよ宮島へ。
宮島は今度で6回目でしたが、すっかり潮が引いて大鳥居に触ることができたのは今回が初めてでした。感激です!ビーサン仕様がここでも功を奏しました。まさか真横から大鳥居の写真が撮れるとは思っても見ませんでした。
朱色の巨大鳥居が青空に映えて本当に美しいです。これだけでありがたい気持ちになります

この後はお楽しみの広島美味探求です。
レトロな空間で食べるお好み焼きはとてもおいしかったです。
何より大人の遠足がこんなに楽しいとは思っても見ませんでした。
「あつまれー」と声をかけると集まれる自由な大人たちって良いなぁ、とつくづく思いました。
次回は高松中心に遠足に出かける予定です。

2009年7月22日水曜日

秋月パルスとkoress project


本日の日経産業新聞「流行ウォッチング」では、”秋月パルス”とkoress project を紹介しました。
(写真左がしがく氏、右がおかじ氏。お二人とも著名なネット企業で働いておられます。しかも若い!)

秋月パルス(しがく氏の手元にあります)は、指先の脈の状態によって特定の文字列がtwitterに投稿されるというネットデバイスです。
通常は「俺、生存なう」なんですが、脈が速かったり、遅かったりのほかに、無かったり、という4段階に分かれています。

私自身がこの秋月パルスを知ったのは、いつものようにTechCrunchです。読んでいる最中から口元がゆるみ、読み終わったときには爆笑でした。完全にスウィートスポット、つぼに入ってしまったのです。 普段はしないのですが、早速koress projectのページに飛び、コメントしてしまいました。

秋月パルスはとにかくユニーク、そして芸術的なまでに洗練されたジョークだと思います。
だって、脈が無かったら「昇天なう」なんですよ、本人の意図しないところでネットにこのメッセージが投稿されるんですよ。すばらしくCoolです。まさしく現代アート。

で、早速取材させてください、とメールしたところ、快諾していただきまして6日の夜にお会いしました。
お二人に話を聞くというよりも、とにかく会ってみたかった、というのが本音です。
そしてお会いしてみたら、その制作物にぴったりな思索的なお二人でした。
一言、頭良いなぁ、という印象です。

お話もおもしろく、開発者で制作を担当された しがく氏はトークも早く、情報を一気に吐き出すタイプの方。一方の秋月パルスのアイデアを出した おかじ氏は、哲学者のような顔をして静かに話すタイプの方。しかし、おかじ氏のほうが実はヒトが悪い、と見ました。

というわけで、twitter向けデバイスとして秋月パルスが製品化されたら、真っ先に購入したいと思っています。詳しくは日経産業新聞をお読みください。

2009年7月13日月曜日

企業の採用基準と学生の自己評価基準

「週間ダイヤモンド」7月11日号に「2010年新卒就職戦線総括」と題する特集が掲載されました。この中に今年5月に実施されたアンケート調査の結果が掲載されています。
特に注目すべきは、上の写真にある”企業が採用選考に当たって重視している点と学生のアピールポイント”でしょう。
企業が重視しているのは、「対人コミュニケーション力」「行動力」「基礎学力」「考察力・論理的思考」の4ポイントで、いずれも学生側からはアピールポイントとして認識不足とされています。
一方の学生は、アルバイト・サークル・ボランティア活動をアピールしたがっており、すれ違っているのです。

このアンケート結果を先週の授業の中でとりあげ、学生に対して説明しました。実際の採用の現場、そして採用後にどのような評価を企業は下しているのか、についてです。

まず採用の現場では、うつ病にならないような人間、すなわち心の健康度を見ています。以前このブログにも書きました(グループディスカッションの効能 )が、この健康度は対人コミュニケーション能力の高さがひとつの目安になっていると考えています。

次に配属先では、やはり「基礎学力」「考察力・論理的思考」の2点が特に評価を分けると思われます。この点についての私の実感ベースでは、読み書きそろばん、ができるかどうかに絞られてくると思っています。

まず読み書きですが、これは社内メールに端的に現れます。
タイトルのつけ方、用件のまとめ方を見れば「頭良いなぁ」とか「こいつダメだなぁ」といった判断が簡単にできてしまいます。特に用件のまとめ方が下手な社員への評価は低いですね。

箇条書きにできない、要領よくまとめられない、といった時点で、私は「考察力・論理的思考」が欠けていると思います。こういう社員に共通しているのは、数字が読めない、すなわちそろばん能力が低いことです。
私は学生に、そろばん能力とは中学校卒業レベルの数学である、とよく言います。中卒レベルの数学ができれば、企業経営における数字の管理など、なんとでもなります。

またこのレベルの数学ができれば、文章を読んで、その中身を立体的・論理的にイメージする能力が備わっているはずです。
いわゆる文章題と考えていただくと、実際のビジネスにおいては、読み書きは、ビジネス構造を説明および理解する能力であり、そろばんは、文字で書かれた内容をビジネスモデルや業務フローなどに置き換えることができる能力だと考えています。もちろんそのビジネスモデルと業務フローで儲かるかどうかまでわかることが前提ですが。

つまり基礎学力、特に数学を通じた論理的思考および考察能力の高さが、できる人間かそうでないかを分けると、私は思っています。だからこそ数学は徹底して教育すべきだと考えているのですが、実際にはそうではないようです。
そもそも数学が好きな中学教師はいるのでしょうか?
数学が好きな先生に習えば、学生も好きになるはず、というかその確率が高まるはずです。
少なくとも私の周辺には、数学の好きな先生に学んだ形跡のある学生は少なく、教師の採用基準をもっと深く考察すべきではないのか、と考え込んでしまいます。

2009年7月9日木曜日

インターネット世論が政治を変える、かも

今度の日曜日は都議会議員選挙があります。麻生政権も危ない、ということで政治ネタが増えていますね。これに関係しているのか、ネットでの政治ネタも増えています。

Yahoo! みんなの政治」で「政治投票」がスタートしました。内閣支持率の定期調査も行えるということです。日頃テレビ局による電話世論調査に疑問を感じていただけに、うまく動けば本当の国民の意見が届くと思います。

ちなみにテレビ局の電話世論調査ですが、調査を少しでも生業にしたことがある者なら、おかしい、と感じるはずです。
なぜなら、固定電話のある世帯、というだけでかなりの国民が対象とならないためです。固定電話がない世帯が年々増えているわけですから、この段階で世帯主の年齢が40歳以上が中心となっていることがわかります。

さらに土日調査ですが、土日に自宅にいて長々と電話アンケートに回答できる人、となると、ここでもある程度の年齢以上に限定されてしまいます。たとえば小学生や中学生のお子さんがいる家庭なら、たいてい何かの行事があって、どちらかは外出していることが多いためです。
この段階で、アンケートに回答している世帯主年齢がさらにググっと上昇します。

つまり、私の推測では、世帯主年齢が50代後半以上のアンケート結果がテレビ局が実施している世論調査の実態だろうと思われるのです。
事実、田園調布にお住まいの70歳を越える元大学教授は、世論調査の電話がよくかかってくる、と先日笑いながら話しておられました。これは私の推測を裏づけている話だと感じませんか?

職業や生活環境のばらつきなどを考えると、日本人の実態に近い世論調査が実施できるのは今やインターネットである、という事実に気づきます。
たとえ住所不定の日雇い派遣労働者であっても、インターネットなら自分の意見を伝えることが可能な環境が日本には揃っています。
”ネットで政治”は、正しい世論調査に近い結果を得るひとつの方法論であることがわかります。

ちなみに「政論検索」では、政策一つ一つに対する著名人・政治家の態度や意見を知ることができます。たとえば”役所のあっせんのない天下り”では、肯定に麻生総理、否定に前原民主党元代表がリスティングされています。こういうものも私たちが政治を判断する際の参考になります。

最後に、政治といえばお金の話ですが、「楽天:政治献金、ネットでも 27日めどにサイト開設」というニュースもありました。 いよいよ日本でも政治献金が気軽にできるようになるわけです。そうなると、ますます「Yahoo! みんなの政治」や「政論検索」の意味が大きくなります。

これまでの政治は、高齢者に偏った政策が通りやすい状況でした。テレビ局の世論調査すら高齢者偏重の可能性が高いわけですから、メディアが流す情報も疑ってかかったほうが良いと思われます。

インターネット世論が日本人全体の意見となるにはまだ時間がかかると思いますが、これらの動きは、正しい世論を生み出す、歓迎すべき流れではないでしょうか。

2009年7月7日火曜日

「日々の音色」

TechCrunch Japan を読んでいたらSOURというバンドのミュージックビデオのことが取り上げられていました。無数のWebカメラを使ったもので、見ると圧巻です。どうやってつくったのかなぁ、と想像するとすごいことをやっていることが改めてわかります。

YouTubeでこの「日々の音色」を検索すると、5日前にアップされたにもかかわらず既に177,674回再生されています。


このビデオの制作に協力したファンの国籍がばらばらなので、「ホントにファンなのか?」と思って彼らの公式サイトでプロフィールを読むと、とても国際的な育ち方をされた面々です。YouTubeでのビデオの紹介も英文だし。

彼らの活動の中でYouTubeはとても重要なプロモーション方法、というよりもYouTubeを中心に活動し、ファンを増やしているという感じです。
たとえば、
PV「半月」はYouTube.com / .jp双方のピックアップ作品となり10万以上のアクセスを集め、広告批評誌「2007ミュージックビデオベストテン」第7位にも選出。”
というあたりにこれが現れています。

もちろん音楽もステキなので、ぜひ上のビデオを見てください。

2009年7月4日土曜日

「MW」

映画「MW」を観て来ました。
タイ市内でのカーチェイスに始まり、米空軍アパッチで終わる、全編スピード感あふれる作品です。
途中までは、いわゆる復讐劇かと思っていたのですが、結城自身がテロリズムに染まっていることがわかってきます。

結局は友情という邪魔が入って復讐がかなわないか、結城の死で終わるのかと思いきや、最後までブラックなままでした。ジメジメとした作品は好きではないので、私には面白かったです。
「DEATH NOTE」で成功した映画とテレビドラマとの連動も、まだありそうな雰囲気がプンプンとするし、当然続編がありそうな余韻を残しています。

玉木宏の悪役はかっこよく、ダイエットの成果か、細長い手足がなんとなく異常さを醸しているかのようです
。一方の山田孝之は、振り回されて悪行に手を貸してしまうという役が似合います。白夜行の後半を観ているような気がしました

時間の共有が大切だと感じるとき

最終プレゼンまで残すところ1ヶ月となったサービス産業論ですが、昨日は個人面談を行いました。
実施の理由は、どうも進みが遅い、と感じたからです。

水曜日にリーダー役の学生3人に電話で進行状況を確認したところ、やはり進みが悪いのです。確かに今回はテーマが重いのですが、それにしても紆余曲折の時間が長すぎると思いました。そこで、希望者には個人面談を行うと宣言し、昨日を迎えました。

結局9人の学生が個人面談を希望し、10分くらいずつ話をしました。
「現在の進行状況はどう見ているか」「どういうところに不安を感じるか」「他のグループはどう見えているのか」等々、4年生は就活とダブルになっているため、内定が取れない学生はあせりもありますので、就活の状況も聞きました。

普段から学生には、どういう生活環境なのか、家族関係、特に一人っ子なのか長男・長女か、それとも弟・妹なのか、などについて聞いています。
良くも悪くも人間は環境に育てられている部分があるため、育った環境や人間関係の基礎になる兄弟姉妹のなかでのポジションは、彼らを理解するのに役立ちます。

彼らが話した内容は大きく3つにまとめられます。
1.時間がない、集まりが悪い
2.リーダー不在、またはリーダーシップを感じない
3.意見を十分に言えない、遠慮している

2も3も、1が根本原因となっています。
共有する時間が長くなれば、自然と3はなくなり、2も解決されてきます。
「同じ釜の飯を食う」という言葉がありますが、なんだかわからないけどずーーっと一緒にいると生まれる連帯感や遠慮会釈の無さがないために、心理的な垣根が取れず、正直に自分の意見を言えない状況に陥っているのです。

遠慮がなくなったり連帯感が生まれると、自然にリーダーシップのある人間が引っ張っていけるようになりますし、リーダーを支えようとするフォロワーも登場します。
そうなると、とんとんと進んでいくようになります。無駄な時間も含めて共有することが人間関係を良くするのです。

早速リーダー役の学生にこれらを伝え、改善策を考えました。
来週以降の進展に期待したいと思います。