沈まぬ太陽

映画「沈まぬ太陽」を観て来ました。
品川のプリンスシネマで観たのですが、満席、しかも20代のカップルがいるなど、場所柄か重たい内容の割りに幅広い年齢層でした。

さて映画ですが、原作となった小説の「沈まぬ太陽(新潮文庫)」が全5巻の大作ということもあり、ストーリーを追うだけで精一杯、という印象でした。
私は一時、山崎豊子作品にはまって読んだ時期があるのですが、「沈まぬ太陽(新潮文庫)」は最も印象に残る作品でした。JAL機の墜落が強い印象に残っていることはもちろんですが、当時の報道関係者の中に友人がいたりして、あまりにも身近だったためです。

しかし「沈まぬ太陽(新潮文庫)」の本質は、映画に描かれているとおり、国策会社の不祥事が続く中(小説によると、同社の飛行機は墜落に近い事故をあの大事故の前にも数度起こしています)、その危険性を経営陣に訴えてきた主人公が不当な扱いを受ける一方、経営陣へ寝返ったかつての友人が昇進していきます。しかしそこには、政治家や運輸官僚との癒着、裏金、着服など、暗部が広がっており、善意の人々が政治に翻弄される、ということではないでしょうか。

映画を観ながら(実話だとして)、仮にジャンボ機事故の当時に、JALが周辺をきれいに整理していたら、今のような状態には陥らなかったのではないか、とさえ感じました。
現在JAL再建に向けて、国土交通省と債権者(銀行)との間で綱引きが繰り返されているようですが、JALを破綻させたところで何の問題があるでしょうか?

国内移動の費用より、韓国や中国に行くほうが安いなんておかしいと思わなければ。
こういうねじれの原因を作っているのは規制しか考えられません。航空機の乗り入れに官庁から許可が無ければならないなど、その一例でしょう。
企業は自らのリスクで乗り入れを決めるのですから、勝手にさせておけばいいのです。

そういえば、最近届く旅行代理店からのプラン紹介のメールを良く見ると、大韓航空を利用したツアーが多いことに気づきます。インチョンを経由していくのでトランジット時間はかかりますが、相当安くなっています。トルコの世界遺産級の観光地をすべてめぐって10万円を切るようなものまであります。
こういう方向性に向かうことこそ、本当の航空行政だと思います。

つまり、あまりにタイムリーなため、こんなことを考えさせられる映画ではありました。
次は「This is it」ですね。


池田信夫先生のツイッターで知ったのですが、主人公が遺族のために尽くしたというのは全くのデタラメ、フィクションだそうです。実際に当時取材されていた方が”小説「沈まぬ太陽」余話(Ⅲ)”というものを書いておられます。こちらもぜひ読んでみてください。一気に感動が薄れます。(10月27日追記)

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