【齊藤 貴子】 肖像画で読み解くイギリス史


肖像画で読み解くイギリス史」読了。

大学では、いちおうイギリス史を学び、絵画では肖像画が大好き、という私は、まさに読者ターゲット!な本書は、イギリスにおける肖像画と肖像画家の系譜についてまとめたものです。

イギリスの歴代国王の肖像画は、ロンドンのポートレート・ギャラリーで、大抵は見ることができます。

肖像画好きの私も、一度だけですが、足を運んだことがあります。
現代のロイヤルファミリーもかけられていて、ちょっとがっかりしますが。

そもそも肖像画は、国王や女王、貴族らが自らの姿を描かせただけではなく、国同士の同盟のために婚約をした王子や王女の姿を相手側に知らせる、という役割もありました。

見合い写真でもあり、互いの成長記録でもある、という意味があります。
有名なところでは、スペイン王家の画家であったベラスケスの「ラス・メニーナス」があります。

また、肖像画のおもしろいところは、国王や司教が着飾っている点にあります。

スペインのプラド美術館には、ベラスケスをはじめとする宮廷画家たちの手による肖像画がたくさんありますが、身につけている大粒の真珠の首飾りや、金細工にルビーやエメラルドの豪華さに驚きます。

今では絶滅危惧種になっている白テンをあしらったビロードのガウンなど、18世紀には大流行したみたいです。


肖像画は、王の権威付けを狙ってかかれてはいるものの、本人の特徴を描くことも重要です。つまり、似ていなければなりません。

そういう目で見ていただきたい肖像画は、ハプスブルグ家の皆さんです。見事に似てます。

スペインハプスブルグ家 フェリペ4世
神聖ローマ皇帝 カール5世
カール5世が先祖で、フェリペ4世は曾孫くらいになると思いますが、下あごが出ているのが特徴です。
また、たらこ唇の系譜も、ずっと後になると特徴づけられてくるので、肖像画を見ただけで、ハプスブルグ家出身であることがわかるくらいです。


本書では、イギリスの肖像画がテーマですが、肖像画のおもしろさについて、読みやすくまとめられたものは少ないので、肖像画に興味のある方にはぜひ読んでいただきたいです。



肖像画で読み解くイギリス史 (PHP新書)

齊藤 貴子 PHP研究所 2014-09-13
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