人口減少社会に対する誤解、未曽有の人口減少がもたらす将来の危機とは?(3)

松谷明彦・政策研究大学院大学名誉教授による連載3回目。

前回にひきつづき、人口減少がもたらすリスクについて解説されています。


未曽有の人口減少がもたらす経済、年金、財政、インフラの「Xデー」(下)


女性・高齢者などの余剰労働力や外国人労働力などで補填すれば、経済成長が確保できて経済は衰退しない、というのが政府の考え。生産能力は維持できるが、それだけで経済成長は望めない。

ビジネスモデルの後進性により、新興国との競争にやぶれ、すでに日本の製品は世界市場でどんどん売れなくなっている。

現在、先進国間で進行中の製品開発競争は、実は人材獲得競争。世界中から優秀な人材を集め得た国や企業が勝ち組となる世界。そこにはもはや国境はない。

「その国の地理的エリアにおける製品開発力が、その国の製品開発力。その場合、研究者・技術者の国籍は問わない」というのが世界の常識。

今の日本は「開発水準の低い国」と見られているため、優秀な外国人はまず日本に来ない。

有力な外国企業を大量に誘致し、日本経済を国際化する。そうなれば、もはや日本市場ではなく国際市場になるため、外国企業も世界から人材を集め、日本に投入してくる。研究者・技術者にとっても、前述の問題は払拭される。

職人技の伝統は新興国・途上国にはなく、他の先進諸国と比較しても日本の職人技の水準は高い。その職人技と近代工業技術をコラボレートし、ロボット生産ではできない「高級品」や「専用品」づくりを目指す。

世代間の所得移転というフローでは高齢者を支え切れない。社会的ストックによって高齢者の生活コストを下げようという新たな発想が必要。

高齢者の生活コストで圧倒的に大きいのは住居費。家賃補助、利子補給などの財政負担なしに家賃を引き下げるスキームを考える。

公共賃貸住宅に介護施設を併設し、若い人の入居も可能にする。欧米先進国では、公共賃貸住宅が高齢社会の安全弁として不可欠の役割を果たしている。

スウェーデンには、民間人が近所の高齢者のケアをすると、国から費用と報酬が支給されるという制度がある。行政サービスの水準を維持しながら、行政コストを縮小するうまい方法。

民間取引価格より5割から倍も高い、業者優遇の政府調達価格、いわゆる「官庁価格」は即刻廃止すべき。

国民の負担が増加する中で、最も大切なのは税の公平性。

確かに言えることは、日本人はこれから、人口減少を前提に考えて生きて行かなくてはならないということです。人口減少を阻止しようと考えるのではなく、人口が減っても子どもが減っても、引き続き安心して豊かに暮らせる社会をつくっていくほうに、目を向けるべきなのです。

ぜひ、本編もお読みください。


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