【澤田 瞳子】 「若冲」




若冲」読了。

若冲とは、江戸時代の異彩の絵師のこと。
米国人のジョー・プライス氏によるコレクションが、世界的にも有名です。

東日本大震災後に、福島を憂えたプライス氏の好意から、これらのプライス・コレクションが展示、公開されたことも記憶に新しいです。

福島県立美術館 「若冲がきてくれました」 プライスコレクション展


若冲という人は、当時としてはかなりの偏屈だったようで、京都の大店の主人という立場にありながら、日々、画業に取り組み、40歳で店を弟に渡して隠居してしまいます。

隠居してからは、まずます絵にのめりこみ、鶏を庭先に数十も放し飼いにしていたとそうです。


若冲

澤田 瞳子 文藝春秋 2015-04-22
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そんな若冲の心のうちを描いたのが本書です。

小説ですので、当然のことながら著者のフィクションですが、なぜ若冲はのめりこむように絵を描いたのか? なぜ当時の画風や常識を無視した絵を描いたのか? なぜ細かいマス目を使った絵を描いたのか? などなど、若冲ファンなら気になるポイントに新たな解釈を与えてくれる内容です。

たとえば、若冲の作品で最も有名なマス目を使った屏風絵。


想像上の動物も含めた、珍しい動物たちを配した構図もさることながら。やはり一番の特徴はマス目をひとつづつ彩色して描いている点です。

従来の解釈では、若冲の母方が織物関係だったので、絵柄を織るための台紙をヒントにしたのではないか、というものがあります。

本書では、そんなうがった見方ではなく、ああ、たしかにこんな状況なら、マス目というアイデアが出ても不思議はない、と思わせてくれます。

若冲ファンはもちろん読んでほしいですが、江戸時代の京の町家に興味のある方にも、ぜひ読んでいただきたい物語です。


Pen(ペン) 2015年 4/1 号 [若冲を見よ]
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