【瀧澤 中】 「『幕末大名』失敗の研究」




「幕末大名」失敗の研究」読了。

長時間移動するので、近所のファミマで本を物色していて遭遇しました。
コンビニでは、こういう本も売ってるんですね。

本書では、幕末大名として有名な、阿部正弘、井伊直弼、山内容堂、松平容保、島津久光のほか、徳川慶喜などが登場します。


「幕末大名」失敗の研究 (PHP文庫)
by カエレバ


また、水戸藩と長州藩を比較もしていて、なかなか示唆に富んでいます。

特徴としては、近現代史に登場する政治家と、幕末大名の行動などを比較検討している点です。

ひとことで言ってしまうと、幕末大名の残念なところを列挙し、分析したのが本書です。


目次の中から、特徴的なものを列挙すると、

田中角栄を唸らせた、北京の宿舎
阿部の改革とゴルバチョフのグラスノスチ
井伊直弼は斬られて役割を果たした?
迫力なき「野党」山内容堂の限界
村長になった龍馬暗殺犯と県会議長になった三井財閥総帥暗殺犯
クレマンソー勝利の秘訣
新政府に入ったかもしれない会津藩
西郷の「田舎者」発言に憤然とする久光
岸信介にあって、島津久光にないもの
「天下の副将軍」意識が水戸藩にもたらしたもの
水戸藩・長州藩の組織ライフ・ステージ
派閥抗争のもっとも愚かな点

ちょっとした歴史トリビア的な内容ですが、なるほど~、と思うところも多々ありました。

たとえば。

日露戦争終了後、一応は勝利したことになっている日本では、国内で賠償金を得られないことに不満爆発、多くのマスコミ(新聞)は、民衆をあおり、政府への批判を強めていました。
そんななか、大阪新法は、講和条約を締結した政府を支持する論調を載せたため、販売部数がみるみる減少していました。
困り果てた主筆が、社長に判断を仰いだ。社長は、こう返答した。
「主筆が主張する議論に余も同感なり。新聞は正義口論の機関にして、営利を目的とするにあらず。ゆえにもし、正義を主張するに対し、読者が反対して新聞を読まずとも可なり。読者が最後の一人となるまで主張を曲げるなかれ」
この時の社長は、原敬。原は政治家となってのち、権力を嫌わず権力を利用して頂点に上り詰めた。しかし、新聞社時代のこの姿勢には、権力におもねるのではなく、冷静に政治を判断しようという原の信念を感じる。

山内容堂が絶大な期待を周囲に抱かれながらも、最終的に中央政界で主導権を握れずに終わったのか?
そこには、容堂が持っていた政治家としての失敗の要素が関係してくる。
第一に、良心的中道という弱点があった。
激動期には極端な議論をする方が、政治的に力を持つことが多い。
幕末で言えば、尊皇攘夷である。
(中略)
民社党は西欧型の社会主義、つまり反共主義で官僚主義的な政策を掲げていた。「福祉国家建設」を最初に政策として掲げた政党でもあった。
しかし、保守か革新か、という中で存在感を示すことができず、党勢は結党時を上回ることがなかった。
これは民社党が掲げた政策に問題があったのではなく、自民党への批判票は多くが社会党に流れ、逆に社会党や共産党に対抗する政党としては、自民党の方が国民には分かりやすかったのである。
 
(中略)中道路線は、民社党がよく口にした「是々非々」でもある。 
第二に、政治的主張の硬貨(?、たぶん硬化)。言い換えれば、主張を変えないということ。
(中略)容堂が政治的損得計算で行動していたとはとても思えない。
どうして政治的にうまく立ち回り、主張を変更してでも、土佐の地位を上げようとしなかったのか。
 
長くなりましたが、日本企業では、最終的に中道路線に落ち着いてしまうために、 思い切った改革や、斬新な取り組みができずに、長期的な苦境に立たされていました。
つまり、山内容堂ばかりが選択されて、長州、薩摩、水戸といったプランが選択されないために、苦境にあるわけです。

政治的にはどうかな~と感じますが、激動期(長い不況は激動期ですよね)こそ、過激なプランを選択すべし、ということのように思いました。


本書は、歴史好きな方にはもちろんですが、経営者の方にも参考になるエピソードがいろいろと盛り込まれています。
さすがPHPというところでしょうか。


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