【石黒 耀】 死都日本



石黒 耀 「死都日本 (講談社文庫)」読了。
文庫で2センチもある厚さですが、どんどん読み進めることができる天災シミュレーション小説です。

まるで、今回(2016年4月)の熊本地震を予知したかのような地震と火山噴火の最悪のシナリオが小説となっています。


死都日本 (講談社文庫)

石黒 耀 講談社 2008-11-14
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帯には、『小松 左京日本沈没」(1973年)以来の国民的大災害小説(ディザスター・ノベル)として永く記憶されることになるだろう。』とありましたが、まさに的を射た表現だと思います。


日本沈没」は、日本の国土が地震と火山噴火で海中に没する、ということを描いた名作です。
草薙 剛主演でリメイクされたことを記憶されている方も多いと思います。


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さて、死都日本」です。

こちらは、九州南部の霧島周辺で、直径16キロに上る「破局噴火」が発生。

本書では、これに対する政府の対応はもちろんのこと、「破局噴火」によって引き起こされる災害を事細かく描いています。

小説の中には、映像で見たほうが早いし、よくわかる、という内容のものがありますが、「死都日本」はまさしくこのジャンルの小説です。

火山用語がおびただしいまでに登場し、しかもその災害シミュレーションを文章で読むことのまどろっこしさときたら、早く先に進みたい読者にはちょっとした苦行です。

しかも、見たことも聞いたこともない災害規模なので、文章を読んで想像するのにも限界があります。

これほどの名作ですから、映像化はいずれされると思いますが、その際には、破局噴火を十分に解説する前編と、巨大災害にあってなお、しぶとく世界と戦う政府の戦略を描く後編とに分けて制作していただきたいです。

ぜひ、NHKのコズミックフロントばりのCGと解説つきで前編の制作をお願いしたいです。


もう一つの本書の特徴として、古事記に記載された神生み伝説などを火山神と設定して解説していること。おもしろいと思いました。

聖書の黙示録や予言書なども火山災害と読むと理解できる、という表現もあり、この手のお話に興味を持っている方にもおすすめです。


私が気になったのは、冒頭に出てくる「踊狂現象(ようきょうげんしょう)」と災害との関係です。
「踊狂現象」というのは、幕末の「ええじゃないか」のような、何百万人もが踊り狂いながらお伊勢参りするようなことを指し、飛鳥時代から記録があるそうです。

この現象の後には、大きな地震や噴火があることが知られていて、日本人は敏感に感じるのではないか、と書かれています。

死都日本」の設定でも、政権交代した後の政府、ということになっていて、2011年の東日本大震災の前に民主党政権に替わっていたことを予言しているかのようです。

ちなみに「死都日本」は、2002年に書かれています。

この予言については、著者が、本書に取り組むきっかけとなったのが阪神淡路大震災だということを知ると、ああ、なるほど、と納得できます。

阪神淡路大震災のとき、社会党の村山首相でした。
自民党が単独では政権を維持できず、ライバルだった社会党を取り込んだのです。

私なりに解釈すると、現代の「踊狂現象」とは、自民党が国民から見捨てられて自民党政権が危うくなること、なのではないでしょうか。


すっかり石黒 耀ファンになった私は、現在「富士覚醒 (講談社文庫)」を読み始めました。

死都日本」を読み終わると、「富士覚醒」が読みたくなること、間違いありません。


災害を描き、日本国の存亡をかけた国際政治戦略を提示した本書は、やはり「日本沈没」以来の名作だと思います。早く映像で観たいです。



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