【加藤 シゲアキ】 「閃光スクランブル」



NEWS・加藤シゲアキさんの「閃光スクランブル」読了。

デビュー作「ピンクとグレー」がとても良かったので次作である「閃光スクランブル」を購入しました。


閃光スクランブル (角川文庫)

加藤 シゲアキ KADOKAWA/角川書店 2015-11-25
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本作も渋谷が舞台の芸能界もの。

すこし違うのは、前作「ピンクとグレー」が、最後の最後までアンニュイで救われない印象の作品(傑作です)だったことに対して、本作は、最後はハッピーエンドということ。

この違いは、著者である加藤シゲアキさんが属するアイドルグループNEWSの趨勢にひどく影響されていることが、文庫版あとがきに記されていました。


自分を見失っているアイドルと未来に背を向けたカメラマン


主人公はふたり。

ひとりは、アイドルグループの一員・亜希子。
グループのなかでの競争に押しつぶされそうになってもがいている一方で、大物俳優との不倫を逃げ場とするような、ある意味、どこにでもいる「自分に自信のない」女。

もう一人は才能あるカメラマンだったのにパパラッチとなってしまった巧。
その原因は、妊娠していた妻・ユウアが渋谷のスクランブル交差点で事故死したこと。それも巧の目の前で・・・。

前作も主人公ふたりの陰と陽をそれじれのエピソードとして描いて、互いに知らなかったことや事実・真実を最後にまとめ上げて、読者の目線を次第に鳥の眼にしていくという手法でしたが、今回もほぼ同様。

なんですが、二番煎じ感はまったくありません。


アクションもあるロードムービーっぽい仕上がり


読後感はさわやか。
なのですが、登場人物はうさんくさいキャラが多いです。

巧が通う刺青屋で本物の女医とか、探偵なのかパパラッチなのか、それとも裏の情報屋なのか、季節で名前を変える奴とか。

しかも、巧がテコンドーをやっていたという設定なので、中盤には派手なアクションもあって、映像化したら、さぞかしお金がかかるだろうと思われる展開になっていきます。

そして、ついにいっしょに逃げることになった亜希子と巧。

ふたりを追いかける大物俳優からの追手との格闘ふくめ、星空を眺めながら互いの過去を語り合い、過去と決別し、未来を切り開こうと決心するまでのふたりの逃避行は、よくある映画のようです。


ローマの休日 (字幕版)
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Twitter の描き方がリアル


10月に映画が公開される朝井リョウさんの 「何者」は、就活に苦しむ大学生たちの心情や行動などをTwitterを通じて描き出した作品。
裏アカウントで毒を吐く主人公の闇がよく表現されていました。

一方「閃光スクランブル」では、日本中でTwitterに情報が投稿され、有名人であるからこそ、どんなに隠れていても誰かがみていてつぶやいているという現実を、さりげなく描き出しています。

しかも、ネットからメディアに情報がすぐさま流れていくあたりのスピード感も、一般人ではないからこそ感じるのだろうことがわかります。

おまけに、テレビもネットも見ないだろう中華店の店主からサインを求められるあたり、知っている人はとにかく何でも知ってるけど、知らない人(興味のない人)は徹底的に何も知らない、という、これまた現実を描いています。


生身の自分との距離感


ピンクとグレー」でも、スターとなった白木蓮吾が、生身の自分とずいぶんと離れてしまった自分との距離感に悩み、自殺してしまうことが描かれていましたが、本作でも、同じようなテーマを亜希子が体現しています。

亜希子の場合には、自分以外のメンバーには才能があり、自分には運の良さくらいしかないというコンプレックスがあり、それを埋めるかのように必死で練習に励む様が描かれます。

これを助長するのがネットでの書き込みです。
ポジティブな書き込みはうれしいけど、自分に対するネガティブな書き込みに対して極端に反応します。

つまり、自分を見失い、生身の自分をすっかり忘れてしまっている亜希子。

心無い書き込みに胸を痛め、自分をいつのまにか否定するようになるというあたり、有名人でなくとも体験する可能性のあることです。

そういう意味で、亜希子は、SNSに翻弄される現代の若者と見えなくもありません。


著者のあとがきにはこうありました。
自分は「閃光スクランブル」を書いて救われました。

最近、テレビで見る加藤シゲアキさんは、自らのポジションを固め、自信を深めているように見えます。

正直なところ、「ピンクとグレー」や本作が出版されたころの著者は、NEWSのなかでもよくわからない人でした。
名前も漢字で読みにくかったし。

このあとがきはつまり、アイドルとしても成長したことを示している、そういう意味なんだと思います。



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Burn.‐バーン‐ (単行本)

加藤 シゲアキ KADOKAWA/角川書店 2014-03-21
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