【深津 十一】 「コレクター 不思議な石の物語」




コレクター 不思議な石の物語」読了。

本作は2013年の「このミステリーがすごい!」大賞の優秀賞受賞作。

http://konomys.jp/archives/vol_11

応募時は「石の来歴」というタイトルだったのですが、単行本化されたときに「童(わらし)石をめぐる奇妙な物語」となり、さらに文庫化で「コレクター 不思議な石の物語」となったという作品です。


コレクター 不思議な石の物語 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

深津 十一 宝島社 2014-04-04
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読んでみて、わたしには最初のタイトルがしっくりくる感じです。
または「童石(わらしいし)」だけでも創造力が働いて手に取ってみたくなると思います。

というのも、わたしがKIOSKで本書を購入したきっかけが「不思議な石の物語」に魅力を感じたからです。


超リアルな子どもの足の石


冒頭で、いきなり登場する、花崗岩にまるで彫刻のように刻まれた子どもの足。

あまりのリアルさに、工事現場で発見された石は気味悪がられ、風変わりな石屋に引き取られていくところから物語ははじまります。

さらに謎は続きます。

主人公の高校生(男子)が、おばあちゃんの遺言を正直に実行し、死人石(しびといし)を作って、ある人物へ届けるのです。

死人石のつくり方は、読者の気分も害するような場面が多くて、なかなかのホラーです。

なのですが、ライトノベル風の文体で、怖さを感じにくいという印象なのです。


魚石・香玉・仮名石・・・・?


主人公が死人石を届けた相手は、珍しい石を買っては割ることを家訓としている家の当主。
なぜ、珍奇な石を集めては割らねばならないのか、その理由はわかりません。

なかに金魚が棲むという魚石。

芳香が漂うという香玉。

割ると仮名文字が一瞬あらわれる仮名石。

などなど、実在しない珍奇な石が次々と登場し、読者を異界のミステリーに誘います。

奇妙な話を読んでいるのは間違いないのですが、筆致が軽くて読みやすいためか、異界とかファンタジーな設定に入り込んでいるという感じがしません。

こういう人がいてもおかしくないし、こういう石があってもいいな、という感じで、リアルな日常感が漂います。

なので、どんどん読めます。楽しいです。


石に閉じ込められた子ども


しかし物語は、残酷な石の歴史を暴くのです。

超リアルな子どもの足は、実は石抜けに失敗した子どもたちの身体の部分であること。

花崗岩で作られた石の箱から地上に出ることができれば修行は終了し、各地に散らばっていく彼らだったのですが、石から完全に抜け出せずに片手・片足となった者たちもまた多い。

そして、地上に脱出しようとしたそのとき、大地震が起きて石のなかに閉じ込められてしまった男の子。

その子孫が、珍奇な石を買い、石を割っていたのでした。


シリーズ化が難しい、ある意味、完成した作品


珍奇な石が登場する、軽快なストーリー展開なので、「これはシリーズ化しても面白いかも」と思いながら読みましたが、最後に童石(わらしいし)の来歴が明らかになったとき、この物語は完成してるな、と感じました。

世界観が出来上がっていて、この物語をリードしてきた石を割る変わったおじいちゃんの役割が終わってしまっていて、物語を引き継ぐ人物がいないな、と。

いちおう、謎の石屋の新しい顧客となる登場人物が最後に描かれていますが、この方ではシリーズ化はできないでしょう、たぶん。


珍奇な石については、日本に古くから伝わる伝説などが取り入れられているので、伝奇小説などに興味がある方にも楽しめる物語です。


デス・サイン 死神のいる教室 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

深津 十一 宝島社 2016-03-04
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